ありがとうは仏教に由来する言葉です。
お釈迦様の「盲亀浮木(もうきふぼく)」というお話があります。
お釈迦様があるとき、阿難(あなん)というお弟子に、
「そなたは、人間にうまれたことをどのように思っているか?」と尋ねられた。
「はい。大変よろこんでおります」と阿難は答えた。
お釈迦様が、「では、どれくらい喜んでいるか?」
と重ねて尋ねると、阿難は答えに窮した。
するとお釈迦様は、一つの例え話をされた。
「果てしなく広がる海の底に、目の見えない亀がいる。その亀は、100年に1度、海面に顔を出すのだ。」
広い海には1本の丸太帽が浮いている。その丸太棒の真ん中には、小さな穴がある。
丸太帽は、風のままに、波のまにまに、西へ東へ、南へ北へと、漂っているのだ。
阿難よ。100年に1度浮かびあがるその目の見えない亀が、
浮かび上がった拍子に、丸太棒の穴に、ひょいっと頭を入れることが有ると思うか?」
聞かれた阿難は驚いて、「お釈迦様、そんなことは、とても考えれらません」と答えた。
「絶対にない、と言い切れるか?」
お釈迦様が念を押されると、
「何億年✕何億年、何兆年✕何兆年の間には、ひょっと頭をいれることが
あるかもしれませんが、ない、と言って良いくらい難しいことです」
と阿難が答えると、
「ところが、阿難よ。私たちが人間にうまれることは、その亀が、丸太棒の穴に
首をいれることが有るよりも。難しいことなんだ。有難いことなんだよ」
と教えられています。
人間が生まれるということはこの亀が丸太の穴に首をいれることがあるよりも、
有ることが難しい「有り難い」ことなんですよと言われているのです。
この地球に人間として生まれることは、まさに軌跡中の軌跡。有り難いこと。
さらに、日本に生まれることも。その中で、人と出あうということも。
どれだけの軌跡の中で、私たちは生を受けて、いきているんだろう、と有り難さが込み上げて来ませんか?